第8話 全員、課長
おわり
第8話「全員、課長」
あらすじ・制度のポイント・台本を読む
第8話「全員、課長」道路使用許可(パレード・パーミット)
ハロウィンを十日後に控えた梨ヶ坂。坂の途中のシャッター通りを「渋谷に行けない若者で埋めたい」と、商店街の会長が地下の係へやってきた。出店料の半分と聞いたテツは、とんでもない仮装のお題をひらめく――。
この話の制度・豆知識
- 祭りやパレードのように、大勢で道路を使う行事には、その場所を受け持つ警察署長の「道路使用許可」が必要です(道路交通法77条1項)。
- 屋台やテントのように道路に物を置く場合は、別に、道路の持ち主(市道なら市)の「道路占用許可」が必要です(道路法32条)。
- 許可には、人数・区域・時間などの条件が付きます。許可を取らない場合も、条件を破った場合も、同じ罰則の対象です(道路交通法119条2項7号)。
梨ヶ坂市は架空の市です。制度は実在のものを紹介していますが、運用は自治体ごとに異なります。 出典:道路使用許可の概要、申請手続等(警察庁)
台本(セリフ全文)
1ページ
勤務中に! 何を! 作ってるの!!
十月の下旬。梨ヶ坂市役所・地下。
ハロウィンの仮装だよ。『歩く札束』
縁起がいいだろ
渋谷、夜の路上飲酒は一年中ダメになったそうです
じゃあ今年はどこで騒ぎゃいいんだよォ!!
……はい、特務トレンド係です
2ページ
商店街から、若者を呼べるハロウィンをと要望だ
地下で頼む
十月三十一日、土曜の夜だ。頼んだよ、豪徳寺くん
おれはいない、おれは札束……
……承知いたしました
源田くん。お客さまです
なんでバレたァ!?
3ページ
なしざか通り商店街の、大黒です
坂の途中で金物屋をやっとります
渋谷がダメなら、行き場のない若い子もおるでしょう
うちの坂に呼べんかね
タダ働きの匂いしかしねえ
……あの坂にも、昔は人があふれたんだよ
……断れない流れね、これ
4ページ
空き店舗が十四。夜の人通りは、十年で三分の一です
梨ヶ坂市・なしざか通り商店街。
バスは坂を上って、坂上の団地へ行く
夜は一時間に一本だ
坂……長ェ……帰りてえ……
まだ半分よ!!
5ページ
坂上ちょうちん行列
坂の下から上まで、ちょうちんが続いてな
三十年前の秋。
それきり、担い手がおらんようになってな
ばあさんが最後まで、またやろうって言っとった
この人数に屋台出したら、儲かったろうなァ
そこじゃない!!
6ページ
イベント会社に頼めば――
十月末は全社埋まってます。渋谷の周りで
補助金は――
締切は春です
じゃあSNSで――
商店街のアカウント、フォロワー十二人です
間に合わないじゃない!!
7ページ
出店料の半分は、あんたにお礼しよう
…………半分?
一区画二万、三十区画で六十万――
半分で三十万!!
僕の取り分は
お礼って、公務員でしょ!?
8ページ
人を呼ぶには、目玉が要る……
仮装コンテスト!! お題は『市役所の課長』だァ!!
段ボールの決裁印、一個五十円なら作ります
若者の来訪者数……本庁に出せる数字……!!
……?
9ページ
パレードは道交法77条……
警察署長の、道路使用許可……
――その夜。
屋台は道路法32条……市の、道路占用許可……
二つ要るのかよ!!
人数、区域、時間……条件つきか……!!
10ページ
道路使用許可――完全に、理解したァ!!
……ちゃんとしてる。テツなのに
許可さえ取っちまえば、あとは何人来ようが自由!!
……本当に?
……ま、いっか。数字、数字!!
11ページ
お題の見本、撮れました。十五秒
課長の眼鏡が光るとこ、完璧じゃねえか
……再生、三十七回です
眼鏡が光らないと、誰も真似できません
光らねえなら――光らせりゃいい!!
12ページ
百円の眼鏡に、LEDテープ……電池はボタン電池……
その夜から、三日三晩。
光ったァァ!!
朝から何よ、それ!!
かけるだけで課長!! 『ゴートク眼鏡』だ!!
インスタに上げます
13ページ
……再生、十万超えました
じゅ、十万!?
かけるだけで、今すぐ課長。
14ページ
全国で、課長が増えはじめた。
昼休みに課長
「今年のハロウィンは、梨ヶ坂の坂で課長になる」
15ページ
三千個、仕入れたぜ!!
当日、屋台で一個千円だァ!!
決裁印、予約三百個
徹夜します。二十二時まで
来訪者数、行ける……!!
坂が、札束に見えるぜ……!!
今日は静かですね
16ページ
……あった
ばあさんの字だ
……また、坂に灯せるなんてな
出店の申し込みも、八十区画に増えたよ
泣けるぜ……八十区画なら八十万……!!
泣くか数えるか、どっちかにして!!
17ページ
そして、運命の土曜日。
区域? 坂は全部、商店街だ!!
並べろ並べろォ!!
源田さん、車道まで……ええのかね
三百……四百……五百!!
18ページ
手ぶらでOK!! かけるだけで、いまから課長だ!!
秒で課長じゃん!!
千円、千円、また千円!!
三千個が、もう……
19ページ
二十一時? 知るか、延長だァァ!!
二十一時。
二十二時なので、僕は帰ります
法律なんで
二十一時五十八分。
いったい何人いるのよ?
20ページ
二十二時。まだ来る。
渋谷から来ました!!
梨ヶ坂、いま課長だらけです!!
売り切れても来るのかよォ!!
21ページ
推定、三千人。
……動けません
さ、三千……?
これ、やばいのでは……
22ページ
許可は百名・歩道・二十一時まで!
車道の屋台は、占用許可もないでしょう!!
条件を破るのは、無許可と同じ罰則です!!
何人来ても自由って言ったの、誰!!
責任者の、市役所の課長さんは!!
23ページ
……はい。梨ヶ坂警察署の
私の監督不行き届きです。申し訳ございません
源田さん
三千人を、歩道と公園へ。お一人ずつ、丁寧に
さ、三千人を……一人ずつ……
24ページ
課長の列じゃねえ!! 公園へどうぞォ!!
会場を、坂上公園へ移させてください
歩道だけで、上ってください
出店料は、全額お返しします!!
おれの三十万……
ばあさんのちょうちんに、火を入れるぞ
ばあさん、見とるか。坂が光っとるぞ
25ページ
……空っぽだ
課長部門、第三位――
――えっ
どうやって案内するんだよ!!
……道が、見えない
うわ、停電かよ!?
……眼鏡、消えてねえ
これ……道みてえだ
26ページ
……まだ、点いてやがる
……こんなん、誘導灯いらねえじゃねえか
……滑走路?
ばあさん、ちょうちんより明るいのが出たぞ
……これ、みんな私の物まねなのですが
今年は最初から、誘導係です……
翌年。
この作品はフィクションです。梨ヶ坂市は架空の市で、実在の人物・団体・自治体・制度の運用とは関係ありません。自治体の公式な作品ではありません。
ページを読み込めませんでした。時間をおいて、もう一度開いてください。